やどしもつ
月の光の大沢は
いかにいつとも 広沢の池
西行
嵯峨野にある広沢池は、嵐山から少し離れているせいか
嵐山が霜葉しても、人影は多くない。
あえて手をいれていない池と、周りの田園が
誰にとっても懐かしく感じるような場所だと思う。
京都の魅力の一つに庭がある。
それは禅寺の石庭であったり、あるいは苔むす庭
枝垂れ桜や紅葉の庭というように日本庭園の極致が
京都にはある。
「ただ池があるだけですよ」といわれ
観光ではお勧めされない、広沢池であるが
実は庭のすべての要素を自分は感じた。
ちょうど鷹が何かを狙っていたが、それは
生きてる美しさだろうと思う。
自分の故郷にも広沢池と同じように
農業用のため池として生まれた池があるが、
それは今では人工的に護岸まで飾られて
まったく昔の面影を残さずに
野趣性を失っている。
一方広沢池はいまだに田圃の真ん中にある。
大切に育てられた京野菜を見ることができる
後宇多天皇陵が鎮護する
土の香りがする場所である。
名月や
池をめぐりて
夜もすがら
芭蕉
沼尻真一