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水急不流月 − 沼尻真一

 
水急にして月を流さず




川の水は忙しく流れるが、川面に映る月を流すことはない。

生滅変化するものと、その上に厳然としてあらわれている

不動のもの。

目や耳に触れる外境は移り変わり、心や意識もそれに随って

無心のうちに変転を繰り返す。

しかし、本来の自己 すなわち 仏性は微動だにせず、

寂然として不動である。



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子供の頃、祖母に仏壇の前に座らされ説教をされる。

その場所は、いつもの自分にとって

ただの箪笥のような木の箱だったり、

線香をあげる場所だったはずが一変する。

すでに位牌になっている祖先も、祖母には

旧知の仲であり、この世とあの世の境があるだけ

だったのだろう。

そうなれば誰でもわかる事なのだが、

若い時分には誰もがわからない。

それはもう懐かしい時代の風景だが、

その場所の大切さや



沼尻真一