赤味の地肌、楓の枝葉に鹿三匹
東京国立博物館 研究員 末兼俊彦先生
末兼先生は、東京国立博物館で
刀と茶釜を研究されています。
単なる伝承ではなく、
学術的に研究されている
結果から、ものの見方をする事は
茶道具でも大切な事と、
良く星野先生は教えてくれました。
そこで末兼先生にお聞きした
茶道具に無くてはならない
釜のお話をまとめてみました。
⚫質問1
茶道の世界では
古より釜は砂鉄から精錬した
「和銑わずく」という製法によって作られて
いたと言われていますが?
⚫先生の解説
日本には縄文時代後期から鉄がありました。
弥生時代にはすでに鉄を
輸入していました。
飛鳥、奈良時代までは
国内で採取できた鉄鉱石を用いて
鉄器を作っていました。
岡山、広島のカナクロ谷遺跡や
滋賀の湖西遺跡などから
鉄鉱石の精錬所の跡が発見されています。
その後、
奈良時代までには、鉄鉱石を採りつくして
しまいました。
平安時代以降は仕方なしに
砂鉄から鉄を精錬して
行くこととなりました。
⚫「茶釜」の私の考察
実際は日本からちゃんと出土した
鉄鉱石で作られたのが、
日本の製鉄の始まりだったようです。
確かに茶の湯の釜は、
国内鉄鉱石が
無くなった時代から作られた。
ゆえに、
砂鉄そして「和銑」が起源
かもしれませんが、
あながち、
いま作られている
釜のように、輸入した鉄鉱石で
釜を作るのも、
弥生からの起源と同じと
いうことになります。
●質問
福岡県の芦屋釜などよくナマズ肌として
茶釜が有名ですが?
●先生の解説
重文に指定されているのは一つだけなので
それが総じてその特徴とするのは、
疑問を感じます。
侘び茶が流行すれば、すぐに釜肌の荒らしが
始まるので。
確かに天明の釜と比べれば、
芦屋はツルっとした肌が多いですが、
全てがツル肌ではありません。
強いてあげれば、天明との
傾向の違いぐらいと覚えて
おいたらいいのではないでしょうか。
⬛刀の扱い方は、釜と一緒では?
金工はすべからく
白手(白い綿の手袋)はしません。
理由は滑って落とす事故の方が
圧倒的に多いからです。
これを聞くと、茶釜も
同じような扱いが良さそうです。
1、まずウエットティッシュなどで
手の油を綺麗にふき取る
2、素手、そして袖をまくる
3、白木の休め鞘は、刃を上に
必ず縦にして、刃先まで見据え
安定した状態で抜く
4、刃先の重みで、刃先が垂れて
ぶつける事のないように注意する
茶釜に関する事だけを
引用しました。
皆さんも、稽古の時には
師匠に 聞いて見ましょう。
「先生、この釜は和銑ですか?洋銑ですか?」