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椿胤 − 沼尻真一 


椿胤(ちんいん) 




鬼に隠れてしゃがんだ陰で、

真っ赤な血潮を、苔の上に噴出しながら立っていた。

そこで椿という樹に初めて遭った。






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村の鎮守には境内がなかったから
いつも子供たちは、村中の屋敷の庭で
鬼ごっこや缶けり、かくれんぼをして遊んでいた。

どの家も農家だから、大きな庭に無造作にいろんな巨樹が
生えていた。

だから、隠れる場所は決まってそんな大木の陰で、
木に寄り添いながら息を殺して隠れていると、
いつの間にか遠くを気にしていたはずのピントが
自分にもどっていた。

スーッと田の風が透き通って
竹林の葉をざわざわと揺らすと、
なんだか一人おいてけぼりのようで
怖くなって、わざと鬼に捕まるようなことも度々あった。


椿の花からつくった「椿胤」という語は
誰でも子供の頃に経験したそんな意味をこめたい。

沼尻真一




























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