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ここが朔望の畔ー大阪法善寺横町・懐石料理「本湖月」ご主人穴見秀生氏/沼尻真一

 


加藤三英先生の大阪高島屋の個展をお祝いで
本湖月のご主人・料理人の穴見秀生さんを伺った。

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■北大路魯山人の一閑張日月椀(いっかんばりじつげつわん)十客


魯山人の一閑張日月椀で食す。

穴見さんが修行時代から憧れ、いつかこの一閑張日月椀に
自分の料理を盛ってみたいという思いを実現させることができた時に、
夢は必ず叶うという実感を得たと話された。

その椀は不思議な椀で、生地の表面に和紙を貼り漆を塗る技法である
一閑張のせいだろう、金の太陽と銀の月に立体感のあるマチエールが
生まれ、そっと触ってつるっとした生地とざらっとした和紙の感触が
指に伝わってくるが和紙ではない。
金属であるが、金属ではない。
儚いが儚くない。
太陽と月、朔望の姿が確かにここにある。
使ってみなければ分からないとはこういう事だと知ると同時に
この器を惜しみなく料理に用いることができる、穴見さんは
料理を超えて舞台にできる料理人である。


※北大路魯山人の一閑張日月椀
北大路魯山人は自らのイメージが完成するまで決して妥協は許さなかった。
それは日本古来の伝統を踏まえつつ
全く新たな美を作り出さんとする大胆な挑戦であった。
そのひとつ金の太陽と銀の月を用いた日月椀は
試行錯誤の末ようやく完成させた傑作である。
これらの器は大正14年に魯山人が開いた
会員制美食倶楽部星岡茶寮(ほしがおかさりょう)の膳を飾るのに用いられた。


■よい器とは「時知らずの器」
 
9月19日から伊賀の土楽窯の陶芸家福森雅武さんの個展が
 京都高島屋で開催される事を教えていただいた。


今回は震災復興を願っての意味から、茶陶を制作されているという。
古くは白州正子さん、そして今では糸井重里さんとの陶器を
通じての交流など、その陶歴は誰もが知っている。

細川護煕さんのご子息で陶芸家の細川護光さんも
福森雅武さんの弟子で郷里熊本南阿蘇で作陶されている。

穴見さんが日ごろ使っているその福森さんの陶製の
高台盆を持って来られて
一気に出刃で氷を削り盛り付け、そして掛け花入れから
一輪の花を添えてくれた。

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焼き締めの器にはどっぷり30分も水に漬け込んでやれば
水を吸って見る見る瑞々しいまったく違う表情を見せるんですよ。

こうして氷が溶けていくでしょ、その水を吸いながらまったく
別の表情をこの焼き締めの器というのは作っていくんです。

まさにこうした焼き締めの器は大地、地球そのものなんですよ
夏らしく、冬らしく、まさに「時知らず」の器とはこういう大らかさが
あるもんですよ。

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■美濃が美濃を食す

加藤三英先生のお祝いでもあり、穴見さんのはからいで
その師匠である人間国宝の加藤孝造先生の志野長皿に
旬の鱧を盛ってご馳走してくれた。

この皿をみてください。
 
本来皿というのは真ん中が低く四方が高くなっているもんです。しかしこの
皿は真ん中がぽっこり盛り上がっている。
僕はここに鮎を盛るんです。

そしたら何と鮎が踊りだすんですよ!この器はすごい。
 
器が料理人に挑戦してくる、だったら俺はこう活かして
こう盛ってやろうと思うんですよ。
 
食器というのは作家の気概がそのままこっちに伝わってくるもんなんです。
普通じゃ面白くない。どこかに見立てる面白さもあります。



■日本の伝統工芸を生かす室礼


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・お軸は狩野探幽、花器は朝鮮唐津と見たが違って萩焼だった。
 月といえば酒井抱一の「秋草図屏風」もよい


穴見さんは20代の4年間をフランスで料理人として
 修行し、外から日本を見ることで
 一年目から、料理の技術、素材の活かし方、空間の室礼
 食器の取り合わせなど、やはり日本料理が自分の中の至高であると
 感じたという。



日本の伝統的な工芸を依頼する人が少なくなってきて、
このままだとその技術や伝統を受け継ぐ人が
いなくなってしまうんですよ。
日本人は欧米の事には本当に詳しくなりました。
しかし日本の事は知らなくなってしまった。


今まで自分もいくつかの店づくりを手伝ってきたので
穴見さんに一階から三階のお店全体の建築と室礼を
見せていただいた。

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・先日若尾誠さんに青磁を教えて頂いたので、南宋龍泉窯か
南宋官窯、約1000年前のものだろう。
穴見さんの所には正統派な美術品が多いので
安心して見る事ができる。


自分はさっそく一階から二階へ向かう、走りの所の
壁の墨漆喰の磨きに眼が釘付けとなった。

入洛壁で着物裾が汚れないようにとの配慮から
この墨漆喰の磨きとなったそうだが、
以前視察したことのある、愛媛県大洲市臥龍山荘でも
見事な墨漆喰を見たことがあるが、その磨きとなると
もはやイタリア漆喰の磨きと同様で、和と洋に境が無い。


・一階クローゼット裏貼りの唐長

・階段内 隠し朔望

・一階 檜カウンター
     欄間 湖月
    
・二階 唐紙の桜染め、アケビ染め

・二階 藺草貼り真塗り座卓

・三階 木割り天井




■日々の中の美しさを求めていく事

日々日常で使うものに良いものを使うと言うことは
意識がまったく変わる上でとても大切なことです。

例えば、働く料理人のまかないの食器でも
うちではすべて作家ものや、店で使う食器同等のものを
料理人たち専用の器として使わせています。

どうでもいい器で食べれば、どんなにいい料理も
餌になってしまうんです。
器も大切に扱わないからそれは餌箱になるんです。
人間の性なんてそんなもんなんです。

日々使うものを大切なものに変えて行く事は
己の感性を養う上でとても大切なことなんです。
それは一人ひとりが暮らしの中でできることだと思います。
日々使うものほど愛着の湧くような
大切なものを使うように心がけることは
とても大切な事です。

自分が大切にできる器を使うことは
結局自分を大切にできることであり、
自分をもてなすことであるということなのだろう。

自分をもてなすことができない人間が
周りをもてなすことができないように、
それは行為ではなく精神 心 人格のようなものに
なり人が生まれたまま何の努力もしないで
元からある皮や脳や心臓 五臓六腑でそのまま素で
生きていてもそれは獣同様であり

その元からある五臓六腑 骨、臓器+人格という
三要素で初めて獣から人間へと成り立つ事を、
一番原始的で本能的な欲求である「食」 で獣のままか
人間になっているのかを判断できる。
「おおかみこどもの雨と雪」

高級食材を食べる事や、高級レストランで食事を
何回することではなく、自ら選び、自ら手をかけて、
あるいは同じ人間としての思考基準で 


・食事 = 胃が満足する = 獣 、獣の餌 × ではなく

・食事 = 心 感性が満足する = 人間枠 ◎

という工夫が
人間になれるか、生まれたままの獣で終わるかの
差別化には必要なのだと気づかされる。



■雪月花

書家であり陶芸家の大家 小林東五さんの器も
お使い頂いた。

それは粉引きを制作する、三英先生や僕への杉浦君の
配慮もあったのだろう。

三英先生は花、僕は月だった。

本湖月は穴見秀生さんの美意識の集大成であり総合芸術である。

新進の作家や白州さんと交流のあった
京都 加藤静允先生の古染付け、小林東五先生
北大路魯山人大家の器もすべてそこには華があった。
制作者のこだわりというよりも、一言に華としか
表現しようがない、つまり食器とは隠れた華なのだろう。

いつも変わらぬ穏やかな表情で、長身を少し持てあまし気味に、
ズボンに下駄をつっ かけて、お宅から工房への道のりを飄々と
歩いて行かれる姿は、とてもお医者様のよう には見えない。
でもやっぱりお医者様なのである。(白洲正子「春夏秋冬 加藤静允」 より)


穴見さんが自宅の庭で育てている蓮を見せてくれた。
花のある暮らしの日々の延長に本湖月がある

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                  こ
                  こ
                  が
                  朔
                  望
                  の
                  畔

                  本
                  湖
                  月

                     沼
                     尻
                     真

                     一







 ・沼尻真一の茶道や茶の湯に関する記事

https://profile.ameba.jp/ameba/chazenichimi




・碧巌録 第四十則 南泉一株花 「無なんてどこにもない」/沼尻真一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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