英国の地では、芝生の管理がその男の品格を表すそうだ。
となればこれはいかん。
タイムを侵食してきた芝生を削り、霜にあてる。
余分な芝が十分に枯れたら、エッジの処理を枕木にするか、
レンガにするか決めなければいけない。
チェーンソーで枕木を切る。
大怪我をする可能性もある生易しくない道具だが、
うまい下手は別としてチェーンソーを持つ男の姿は美しい。
木を切った本数分だけうまくなる道具だ。
チェーンソーの使い方にはコツがいる。慣れてきて
彫刻したくなる人の気持ちが分かる。
危ない道具といえば、小学3年生の頃近所に都会から引っ越してきた
転校生とクワガタ採りにつれていってあげる約束をした。
学校から帰って、今日の森は栗の木の場所だから
穴の中にクワガタが入っちゃうから、祖父の鉈(なた)を自転車の
カゴに積んで迎えにいってやった。
東大出身だという両親の母親が怪訝そうに僕をみていたけど、
一緒に楽しく栗の木を切りまくって、たくさんクワガタをつかまえた。
だけどその日を境に、もう二度とそいつは僕に近づかなかった。
小3でもそれが相手の親の意思だと気がついた。
その後、そいつは無事に東大を出て官僚になった。
クワガタ採っていると東大に入れないのかもしれない。
鉈をチャリンコに積んでる小学生はもう見ないけど、
そんなガキがつくばにいなくなったのは寂しい。
薔薇の穴。
60cmは掘れと先生に言われた。園芸会の常識のようだ。
ブレンドした堆肥を掘った穴に入れる。
穴のテクスチュアがもう自然に美しい。
薔薇を植えたくなくなる瞬間だ。
元の土を堆肥と混ぜ合わせる作業。
料理をしない男でも、こねるのは得意だ。
男が植えるオールドローズはどうだろうか。
薔薇といえば女性のイメージがあるが、薔薇の育苗家は
世界的にも男性が多い。
女性に捧げる薔薇を、泥にまみれた男が酷寒から作る。
このストーリーはいい。
だからあんなにも薔薇が美しいのかもしれない。
*
男ばかりの画像で色気がないので、
09年のつくばハーブ農園の薔薇を載せておこう。
つくばハーブ農園では精油の原料となる、オールドローズのみを栽培している。
・ダマスクローズ − 香油の原料となり、ブルガリアの薔薇の谷を代表する品種
・ケンティフォリアローズ − 中世の画家たちが頻繁に登場させたため
「画家の薔薇」とも呼ばれている。
・ガリカローズ − 別名フレンチローズ、ローズウォーターや砂糖漬けが
薬用に用いられ、薬用の薔薇とも言われる。
モダンローズももちろんいいし、花屋の薔薇も見事だと思う。
オールドローズが市場に出回らないのもしょうがない。
出回らなくて良いと思う。
しかし一番だめなのが、棘のない薔薇がいかん。
この下手糞が手入れをするたびに皮手を突きぬけ、
流れる血を見てそう思う。
薔薇毎に棘の量も強さもそして、痛さも違う。
それがどんな意味をもっているのか僕には不明だが、
花のない時期の薔薇の手入れをしてみれば、
それが一つの「気高さ」のように感じてくる。
言葉もなく花もない、ただの棘の生えた枝の
薔薇のやつでもそんなメッセージを持っている。
僕らはどうだろうか。
男も女も生易しくないように
だから棘の生えた薔薇をプレゼントする男がいてほしい。
この写真が女性には見えない。
やっぱり薔薇はオスカルだろうか。
農園長
※カオン成城、カオン豊洲にて例年通り、5月上旬に「オールドローズフェア」を
開催する予定です。農園から直送される薔薇をお楽しみください。
The Old Rose Advocate 2012 -
つくばハーブ農園 / オールドローズの栽培