profile
selected entry
categories
links
archives
others

ロック魂のある干しいも・乾燥芋の聖地 − 茨城県ひたちなか市「ほしいも工房きくち」、東海村「照沼勝一商店」を訪ねて/沼尻真一


 




全国一の生産量をほこる、干しいものふるさと。

茨城県ひたちなか市、東海村へ茨城県の発行している
フォトいばらき誌の取材に同行しました。

さつま芋と聞けば、普通関東ではベニアズマ種をイメージしますが、
干し芋は、玉豊(たまゆたか)という品種のさつま芋から作ります。




これが正真正銘のイモ洗い


玉豊の作付けは、5月中旬頃行い、収穫は10月10日頃に行うそうです。
つくば市でベニアズマの作付けも同じく5月中旬頃で
 収穫は例年、霜の降るころ10月下旬〜11月上旬
になりますので、
それにくらべ約1ヶ月近く栽培期間が短い事がわかります。

まして、つくば市よりも北に約60Km以上離れている
ひたちなか市ですから、気温は低いはずなのですが・・・、
その答えは、おそらく収穫後約1ヶ月近く
干しいもとして加工するまでの間、芋の糖度を上げるため
寝かしておく必要があるからだろうと思います。

この点を除けば、ベニアズマも玉豊という品種も
茨城県ではだいたい同じ様な生育期間だと見えます。




ただ先日お邪魔したひたちなか市でベニアズマを栽培する
 鹿志村さん
からは、作付け後130日計算で収穫するとの
事でしたから、さつま芋として販売するための
出荷用であれば、それぐらいが目安になるのかもしれません。

茨城県内でも、他のさつま芋の産地である
かすみがうら市や、行方市、鹿嶋市などでは
ベニアズマを栽培する場合、マルチ栽培(畝にビニールシートを貼)
をしますが、玉豊の場合は、水分が命ですので
マルチ栽培はしないということです。

何といっても干し芋と言われるぐらいですから、乾燥がいのちですが、
近年の温暖化のために湿度が高く、干すという部分に悪影響が
出ていると聞き、こんな所にまで地球温暖化の現象が表れています。


☆「ほしいも工房きくち」さんちの干しいも/ひたちなか市


・フジテレビ「おはよう茨城」にも出演中、林家まるこさんと菊池さん


まずはじめにお邪魔したのは、毎年夏に開催される
ジャパンロックフェスでも一躍有名な
ひたちなか市の「ほしいも工房きくち」さんです。


※ちなみにジャパンロックフェスの会場となっている
 国営ひたちなか海浜公園は、日本陸軍の飛行場跡地で
  僕の祖父が従軍していた場所でもあり、敗戦後は連合軍GHQに接収され
  射爆場となっていた場所です。
  体制の場所で反体制の音楽とはスパイスの効いた、なんとも通ごのみの企画です。
  ロックももはや、ビートルズからは平和の音になったのでしょうか。


菊池さんは、約400aの畑で玉豊を栽培し、
干し芋の加工から販売までを行っています。

菊池さんの家は、先代から約60年干し芋を作られているそうで、
ちょうど先代のつれあいの80歳を超えたおばあちゃんが、
矍鑠として元気に皆さんと一緒に働かれていました。

お金を並べるように大切に、一枚一枚、並べて干すと
うめぇ芋ができんだよ。と教えてくれました。



芋の皮むきをパートのおばさんから教えてもらいながら
体験させていただきましたが、蒸されて熱いうちに皮を
むかないと、皮がうまくはがれてくれませんので、
手早いリズム感がいる仕事でした。


・美しい手仕事の風景。こんな茨城の景色がずっと続きますように。


蒸されたばかりの玉豊を、食べさせてもらって
驚いたのですが、もうそれだけで十分に甘くて
もちろんベニアズマのようにホクホク感はないんですが、
逆にシットリしたモンブランクリームのような感じで
上品な甘さを感じました。






 
                               ※すべて手作業です。



茨城県で育った僕らぐらいの年代の人間は、
おじいちゃんや、おばあちゃんが、コタツで冬になると
白く粉がついた乾燥芋を、ストーブであぶって食べてるという
イメージがかなりあると思います。

正直言って、僕は干しいもが大嫌いだったんですが、
今日からなんと干し芋が好きになってしまいました。

蒸して乾燥する前の玉豊を食べてみて、
それぐらい嗜好が変わってしまいました。

販売は、ほぼ100%個人宅への販売で
完売してしまうほど、口コミで人気となっています。
今年販売分の受付は、12月12日ぐらいまでと言うことです。
全国のファンへ出荷されています。



そういえば、先日12月5日はモーツアルトの命日でしたが、
お腹の子にモーツアルトを聞かせるといいように、
玉豊に矢沢永吉のロックはどんな影響がでたのかな?

ボジョレーヌーボーならぬ、2009年の玉豊は
どんな味がするのか?ぜひ舌で試して頂ければ幸いです。

社会から干されるロックのイメージと、
天日に干された芋のイメージの融合って
僕は良いと思いますがいかがでしょうか?佐藤先生。

大御所デザイナーの佐藤卓さんが町おこしに参加しています。



★照沼勝一商店の干し芋/東海村

次にお邪魔したのは照沼さんの会社です。
こちらも先代の照沼勝一氏が創業した、
老舗の干しいものお店照沼勝一商店です。



東海村を中心に、60ha200ヶ所の場所で玉豊の畑を栽培し、
無農薬栽培はもちろん、製造過程にいたるまで、
近代的な工場をつくり、食品の安全管理を行いながら、
地域の干し芋全体の普及に取り組まれています。




・代表の照沼さん。



照沼さんのところでは、
「まる干しの干し芋」を生まれて初めて試食させて
いただいたのですが、外はパリッと、中はジューシーで
これこそまさに、干しいもの中の干しいも、絶品の味でした。
ぜひお勧めします。




試食させていただいた時
照沼さんも一緒にうまそうに食べている姿を見て、
きっとこの辺りの子供たちは
こんな自然食が昔からおやつだったんだろうなと思いました。



現在干し芋の購入者の中心が50代〜70代の方々と
なっている現状を危惧し、若い方々にも認知して
もらえるよう、干しいもの食品としての機能性などを
解析して、あらたな商品開発に取り組まれています。



その中のひとつに、来年春に発売を予定している
「干しいもプリン」を早速試食させていただきました。
緑の粉末は、抗酸化作用の強い、さつま芋のツルに
着目しツルをパウダーに加工したものです。

その他、水をまったく使用していないトマトだけの
濃厚トマトジュースなど、照沼勝一商店の
無農薬の畑で収穫された野菜を用いて
干しいも以外にも、様々なおいしい商品を販売されています。

☆さいごに

今回干し芋のふるさと、ひたちなか市、東海村を訪ねて
やっぱりうちのおじいちゃんと、おばあちゃんを思い出す事となりました。





仏壇のある居間で、コタツに入ってドテラやチャンチャンコを着て、
美味しそうにほし芋を食べていたあの姿の意味が
やっと自分も分かる年になれたのかもしれません。

「干しいも」はそんな思い出も運んでくる食べ物です。

さぁ、もう一丁いきましょうか!



沼尻真一



※取材から数年経った後記

毎年 冬になるとこのブログでは
この干しいもの取材記事が多くの人に重宝されているが、
干しいもの人気は全国的にも、茨城県民が思っている想像以上に感じる。

干しいもの全国シェアの8割を茨城県が作っていて、
まさに茨城県は「干しいもの聖地」ではあるが、
これだけインターネットが
普及したにも関わらず、残念ながらネットで「干しいも」と検索したとしても

 

わけのわからないスポンサーサイトや広告サイトばかりで
まったく信用がない。

「おいしい干しいも」「こだわりの干しいも」を作っている、
ここで紹介した きくちさんや、照沼さんに辿りつけないという
現状が、インターネットの世界の限界なんだと思う。

また、日本各地へ行ったときによく「茨城 干しいも」と書かれた
商品を目にするたびに、手に取り生産者欄を見てみると
単に茨城のイモが原料なだけで、製造は東京で行っていると
書かれているような「なんちゃって茨城 干しいも」が
全国のスーパーにも、ネットにも大量に流通しているのがわかる。

これは茨城の干しいもに限らず、全国各地の名産品の
コピーなんちゃって商品が、中国なみにたくさん出回って
いるのだろう。
日本の食品表示なんてものは、あれだけの偽装事件が起こっていても
いまだに、厚生労働省の基準は農薬にしても、添加物にしても
一定量以上使っていなければ、表示しなくていいなんて
基準になっているのだから、食品を買うときに食品表示なんて
なんの信用もないのを知るべきであるし、
あまりにいい加減だからまったく信用に値しない。

食品表示を添加物や残留農薬まで含めて第三者の
認定機関のお墨付きで食品表示をしたら、
とても怖くて誰もどの食品も食べれなくなるから、
祭りの屋台やいい加減な肉や骨で出汁をとってる
人気のラーメン屋に並び続けて、平気で食える国民性も
あるんだから、まぁ紀伊国屋で買おうが、近所のスーパーで
買おうが、中国よりましなら良しとするぐらいの
なんでもありの日本という国の偽装食品表示レベルだと言う事は、
認識しておくべきだと思う。

やっぱりちゃんとしたものを買うならやっぱり、製造者、制作者から
直接買うか、野菜ぐらいは自分で作るのが一番安心だとつくづく思う。

インターネットの世界=そのほとんどが広告宣伝の世界であり
まだまだ現地の人しか知らない、
またはその専門の世界や業界でしか知られていない一品、生産者、制作者が
ゴロゴロいるんだろうと思う。

思いのある生産者、制作者がつくったものが、
それを必要としている人へちゃんと伝わるようになればと、
取材から数年経た今思う。

インターネットの情報には常に限界がある。
 



SHINICHI NUMAJIRI INDEX


 ・沼尻真一の茶道や茶の湯に関する記事

https://profile.ameba.jp/ameba/chazenichimi